2014/01/19 Category : 文学 2008年下半期芥川賞受賞作品 津村記久子『ポトスライムの舟』を読んだ 芥川賞と聞いて僕が真っ先に思い出すのがこの作品である。何故かはわからない。他の芥川賞受賞作品なんてほとんど知らないのに、どうしてかこの作品のタイトルだけが気になっていた。恐らく、国語の問題集か何かでこの作品を取り扱った問題が出たことも原因の一つではある。しかし、僕はその問題を見る前から、『ポトスライムの舟』を読みたいと強く感じていたのだ。そして、その夢がようやく叶った。いや、実は一年ほど前から手元にはあったのですが、すっかり忘れてしまっていました。読んでみた感想というのを、つらつらと書いていこうかと思います。とにかく、全部読み終わってみての感想というのは「とても普通の作品だな」というものでした。現代純文学の王道をいくと言いましょうか。それなりに大変なことは起こるんだけれど、ドラマチックなことは起こらない。ただ日常を描写している、という感じ。これならば、『蹴りたい背中』の方がまだアブノーマルであったような気がします。『ポトスライムの舟』は日常の小さな悩みの堆積というのを凝縮して詰めたような感じ。ただ、この作品では「衝動」というものが一つのテーマになっているように思います。刺青を入れてみようとか、世界一周してみたいとか、色々な衝動。それに向かって、努力するということ。それに努力するための価値があるのかと言うこと。価値観については僕も色々なことを考えてきました。その価値観の形成をするにおいて、この作品はとても優秀な材料となりうるのではないでしょうか。関連記事 →衒学とナンセンス 坂口安吾『風博士』を読んだ →風刺という実用的かつ娯楽的なもの 星新一『午後の恐竜』を読んで →劣等感との付き合い方 ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』を読んで PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword