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「得る」は「える」なのか「うる」なのか。実態調査アンケートを踏まえて検証する。

こんにちは、あとーすです!
当ブログでは、以前このようなアンケートを取らせていただきました。
アンケートのお願い。「得る」の読み方について

このアンケートをもとにしたレポートによって、授業の単位を無事に取得することができました。回答していただいた方に、ここで重ねてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

さて、今回はそのフィードバックということで、レポートにまとめたことを大雑把ではありますが、報告したいと思います。

長々と書きますので、結果だけ知りたいという方は最後の方の「まとめ」というところまで読み飛ばされることをオススメします。


「得」の活用について

話を始める前に、まずは「得」の活用についての予備知識を持っておかなければなりません。
「得」というのはそもそもア行下二段活用の動詞であり、「え・え・う・うる・うれ・えよ」という風に活用していました。同じように過去において下二段活用であった動詞は他に「経」や「受く」などがあります。

さて、このような下二段活用をする動詞は、そのほとんどが現代語では下一段活用に移行してしまっています。
「経」は「へ・へ・ふ・ふる・ふれ・へよ」と活用していたのですが、現代では「へ・へ・へる・へる・へれ・へよ」という風に活用します。
「受く」についても事情は同じで、「うけ・うけ・うく・うくる・うくれ・うけよ」という風に活用していたのが、現代語では「うけ・うけ・うける・うける・うけれ・うけよ」という風に活用します。

この流れでいくならば、「得」も下二段活用に移行して「え・え・える・える・えれ・えよ」となるのが自然です。
しかし、現代日本語でも「得」を「う」と読む人が少なからずいる。その理由は僕にはわからないのですが、とりあえずその実態を調査してみようということで、アンケートをとらせていただきました。



アンケートの内容

アンケートの詳しい内容については、こちらをご覧下さい。
「得る」の読み方についての実態調査アンケート

質問内容を大まかに言うと、未然・連用・終止・連体・仮定・命令のそれぞれの活用において、「支持を得る」というときのような本動詞的な用法と、「あり得る」のように可能を表す複合動詞的用法の二つについてどのよな読み方の違いがあるのかを調べました。

本来は世代間の比較もしてみたいと考えていたのですが、僕のTwitterのフォロワーの関係もあるでしょうか、10代・20代の人の回答がほとんどでした。さらに、10代・20代の間では調査結果に特に大きな違いが認められなかったので、世代間の比較は諦めることとしました。

また、性別間での違いにも注目してみたのですが、こちらも特に大きな相違はなし。よって、全体的な動向のみをここに記していこうと思います。

まずは、調査結果をグラフにしたものを貼っておきます。
質問内容は、上のリンクから確認してくださいますよう、お願いします。




ちなみに、問1~問3までの質問は、回答者の属性を調べるためのものであるので、このグラフには載っていないよ、ということをここに記しておきます。

さて、まずは問4・問5を見ていくことにしましょう。これは、未然形における使い方を調べたものです。問4では97.5%、問5では99.1%とほとんどの人が「得」を「え」と読んでいます。
問6・問7についても事情は同じようなもので、問6では99.7%、問7でも96.2%の人々が「え」と読んでいます。

これは予想通りの結果だと言えるでしょう。
というのも、未然・連用形はそもそも下一段だろうと下二段だろうと「え」と読むので、そもそも混同の余地がないのです。ここで「う」と読むのは、明らかに間違った使い方だと言うことができそうですね。


次に、問8~問11までをまとめて見ていこうと思います。
まずは問8に注目すると、終止形の「得る」は「える」と読む人が93.7%を占めているのですが、「うる」と読む人も5.4%いて、未然・連用の場合よりもわずかであるが多い。

下二段活用において終止形は「う」、連体形は「うる」です。対して、下一段活用では終止形・連体形ともに「える」と活用します。

ここで、問9を見てみましょう。「あり得る」の形だと、88.3%の人が「ありうる」と読んでいます。

終止形の方にも目を向けてみると、問10では「え」が91.5%で、「う」が6.6%。
問11では「え」が21.5%で、「う」が76.3%となっています。

少しわかりにくいので、表にまとめることにしましょう。
次の表は、問8~問11において「得」を「え」と読んだ人の割合です。
左上が問8、右上が問9、左下が問10、右下が問11にあたります。





これを見ると、問9と問11では10%の開きがあるので、確かだとは言えないが、それでも連体形と終止形の読まれ方には相関関係があるように思われます。
つまり、動作としての「得る」の場合は「える」と読むのに対して、複合動詞的に使うときには「うる」と読む傾向があるようなのです。

連体形は下二段活用では「うる」と読むので、「経(ふ)る」や「受くる」が「経(へ)る」や「受ける」に移行したことを鑑みれば、この動詞はまだ移行期間にあるということができるかもしれません。
しかし、終止形において「得る」を「うる」と読むのは、連体形と混同したことによる誤用ということができそうですね。下一段では「える」、下二段では「う」とならなければならないはずですから。
これは、現代の活用では終止形と連体形を区別する動詞が少ないので、そこから起こった誤用なのではないかと推測することができます。


次に、仮定形の考察に移っていこうと思います。
問12は「え」と回答した人が98.1%で、特に言及することもないかなと思います。ただ、問13は「え」と回答した人が52.1%、「う」と答えた人は42.3%と、差が小さいといえるでしょう。
仮定形において「得れば」を「うれば」と読むのは、下二段活用ならば正しい活用だということになります。しかし、終止形や連体形と同じように、「得」だけで使われるときには「う」と読まれることがあまりないようです。

ここまで見てみると、どうやら終止・連体・仮定形において、「あり得る」などの複合動詞的な使われ方をするときに、「得」は「う」と読まれる傾向にあるようですね。


最後に、命令形における使われ方を見ていこうと思います。
問14は「え」と読むと回答した人が98.4%とほとんどを占めており、予想通りの結果ということができます。
というのも、命令形は下一段でも下二段でも「えよ」と読むからです。

さて、問15については他の質問と違って、「どちらも不自然」の選択肢に多くの表が集まりました。
しかし、まあこれも予測していたといえば予測していたことで、「どちらも不自然」いう選択肢自体がこの質問のために用意されていたようなものなのです。

「あり得」と命令形でうまく活用できる例文がどうしても思いつかなかったのです。
どなたか、思いついたかはは僕にご連絡ください…。



まとめ

ここまででわかったことをざっくりまとめると
・「得」を「う」と読むのは、ほとんど終止・連体・仮定形のときに限る。
・しかし、仮定形は「え」と「う」のどちらも同じくらい存在する。
・終止形において、下一段では「える」、下二段では「う」と読むはずなので、「うる」と読むのは誤用だということができる(連体形との混同)

ということになりますかね。
ううむ、なんだかあまりわかったことが多くないような…。



今後の課題

問16に寄せられたコメントを頼りとして、このアンケートを振り返るとともに今後の課題を探ることにしたいと思います。あわせて、これをコメントに対する僕の答えとしますね。(全てに答えることはできませんが…)

まず、コメントで多かったなあと思ったのが「どちらも自然」という項目を設けてもらいたかった、というものでした。
問9、10、11、13などで、どちらも自然だと感じた人が複数人いたようです。
「どちらも自然」という項目をつくったのはもちろん意図があってのことで、「どちらがより自然か」ということを回答してもらいたかったためです。そこは、少し記述が不正確だったかなと思います。
「どちらも自然」という選択肢を作ってしまうと、終止形や連体形の場合はそちらにばかり票が集まってしまい、比較することができそうになかったものでして。

次に気になったのは、「起き得る」や「出来得る」という動詞の場合にどういった活用をするのか気になるというものでした。
ここは盲点でした。これは「あり得る」と同じように複合動詞的なものだと考えることができますが、僕の感覚でいえば、「出来得る」は「できえる」とは読まないですね…。
活用だけではなく、もっと別の視点から読み方を探らなければならないということがわかりました。近々、このことについても調査アンケートをしてみたいと思っています。
この辺りには他の動詞との混同があるような気がしているのですが、現段階ではちょっとどうなっているのか思いつかないので、今後の課題ですね。

それから、「うる」という読み方が古語的だと感じると、いう意見も多かった。高校の古典の授業なんかでは、「うる」と読んでいましたから、そのイメージが定着しているのでしょうか。
また、古語的だと感じることの関連していると思うのですが、「うる」の方が文語的でかしこまった言い方だと感じる人もいました。
確かに、くだけた場面では「える」を使い、かしこまった場面では「うる」を使うのかもしれませんね。また、書くときと話すときでも違うのかもしれません。この辺りの使い分けというのも、今後の課題としていきたいところです。



終わりに

まあ、調査・分析の結果はこのような感じになりました。
わかったことよりも今後の課題の方が多くなってしまったのですが、なかなか面白い調査結果が出て僕は嬉しく思っております。

ちなみに、僕は「誤用」という言い方を何度かしていますが、誤用が悪いと言っているわけではありません。それは、ら抜き言葉のときにも同じようなことを言っています。
「ら抜き言葉」は昨日的な言葉なのではないかという僕の考え

用語の使い方など、未熟な部分があることは承知しているので、何かありましたらご指摘いただけると助かります。
また、読んでみて考えたことなどあれば、是非ともお聞かせください!
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