2014/09/01 Category : 言葉 「土地勘」と「土地鑑」について ニュースを見ていると、言葉について面白い発見をすることがある。数か月前、あれは通り魔事件についてのニュースだったろうか、テロップを見ていると、「犯人はこの地方に"土地鑑"のある人間で」という文字が躍っていた。僕は「おや?」と思った。そりゃあ、僕だってトチカンという言葉くらいは知っている。しかし、それまで僕はこれに「土地勘」という感じを与えると思っていたから、変な感じがするなあと思ったわけで。で、たまたま昨日もテレビを見ていたら、今度はテロップで「土地勘」と出てきた。おいおい、どっちが正しいんだよ、ということで少し調べてみた。この手の問題はググったらだいたいすぐに答えが見つかるもので、今回も例外ではなかった。元々は警察用語として「土地勘」が使われていて、その誤用として生まれたのが「土地鑑」らしい。「土地鑑 土地勘」とググったらWikipediaのページが出てくるし、その他解説ページが出てくるので、読んでみると面白いかもしれない。土地勘という言葉が誤用から来ているということはわかったので、この記事ではそれが正しいとか正しくないとか、そういうことは考えない。ここでは、その誤用がどのように使われているのかということを少し調べて、その結果を掲載しようと思う。CiNiiで検索してみた例えば同じ誤用でも、ら抜き言葉は目の敵にされることが多い。最近は容認論も広がってきているようだが、論文などで使うことは憚られるという人が多いようだ。でも、「土地鑑 土地勘」の誤用の話ってら抜き言葉よりも広まってないから論文にも使われてるんじゃないかなあと思って、「CiNii」で調べてみた。それで、出てきた論文の数は23件。うーん、少ないといえば少ないのかな? 中には論文ではないものも含まれているので、実際に論文の中で「土地勘」が使われているケースは少ないのかもしれない。一方、「土地鑑」はどうだろか。調べてみると、なんと83件!! ……と思ったら、83件全部が「土地鑑定」の一部として検索に引っかかっただけ。つまり、「土地鑑」という言葉が含まれる論文は、少なくとも「CiNii」には掲載されていないようだ。「土地勘」、なかなか根強く使われているみたいだなあ。「土地勘 土地鑑」がどちらにしても論文には合うような硬い言葉ではない、ということかもしれないけれど。ちなみに、論文でよく使われそうな「跋扈」という言葉を打ち込んでみたら234件ヒットした。でも、ざっと見た感じだと学術雑誌はあまり多くないみたい。Twitterで検索してみた現代日本語の用例を探るのにTwitterで良いツールだよなあと常々考えているので、ここでもTwitterで検索してみることにした。前段階としてGoogleを検索してみたところ、「土地勘」が約 824,000 件で、「土地鑑」が約 3,210,000 件。予想通り、前者の方が二倍くらい多い……と思ったら、後者の方がゼロ一つ多い! これにはかなり予想を裏切られた。ネット界隈では「土地鑑」の方が一般的な用語として認知されているのだろうか?とりあえず、Twitter検索。2014/08/31 18:00~18:59までの「土地勘」を含むツイートは17件だった。それに対して、同じ時間帯での「土地鑑」を含むツイートは1件。これにはかなりの開きがある。この文章を書いているのは8月31日の日付が変わりそうな頃なのだが、実はTwitterの検索窓に「土地鑑」と入れて取得できた最新ツイートが18:29のものだった。これを書いている間にも、「土地勘」の方のタイムラインはどんどんと流れて行くのに、「土地勘」の方はさっぱり動かなかった。ちなみに、「土地鑑」で取得できたツイートは、2014/08/31のものは7件。これはかなり少ないと言っても良いんじゃないかなあ。まあ、Twitterを遣っている人に若年層が多いからこういう誤用が多いのかなあという気もしてたんだけど、ツイートを見ている感じだけで判断すると、別に若年層だけが誤用しているわけではなさそう。反対に、若年層でも「土地鑑」を使っている人はいた。僕が今回調べて面白いと思ったのは、Google検索とTwitter検索で顕著な差が出たということ。Google検索でヒットしたものを見ると、「土地鑑」と「土地勘」を比較した記事がどちらも多い印象だった。それから、「土地鑑」で検索すると辞書の類がわんさかヒットする。これがGoole検索のヒット件数が多い原因かなあと考えている。用例jpで調べてみる用例jpというサイトがあって、面白いので最近いろんな言葉を入れて遊んでいる。様々な媒体から入力した言葉の用例を拾ってくる検索エンジン。3000万の例文から集めているらしいんだけど、カバー範囲がよくわからないので用例の多寡を調べるのにはあんまり向いてないかもしれない。でも、一応検索した結果を載せとこうかと思う。土地勘→169件土地鑑→79件だった。下の方に行くと小説の用例が出てくるんだけど、やっぱり同じ作家は同じ表記で書く傾向があるみたい。例えば、森村誠一さんは「土地鑑」で通している。見知った名前でいくなら、乾くるみさんなんかは「土地鑑」でも「土地勘」でもひっかかった。「土地勘」サイドには筒井康孝とか安倍公房なんかの名前もあった。推理小説で「土地勘」という誤用が使われているという事がWikipediaかなんかに書いてあったような気がするけれど、東野圭吾とか宮部みゆきは「土地鑑」派みたい。この人たちは、警察小説を書くから取材が徹底してるのかもしれないなあ。まあ、誰がどれを使ってるからと言って、何か言えることがあるわけでもないんだけどね。気になったら、検索してみると面白いかも。どっち使っても良いと思う以上、調べながら書き連ねてみた。別に調べて書いたから何か言いたいかっていうとそうではなくて、もう面倒くさいので好きな方使ったら良いんじゃないかなあということ。伝えたい意味は大して変わらないわけだし。「土地鑑」の方が正しいんだからそれを使うというのはそれでいいんだろうけど、「土地勘」の方が浸透していて分かりやすいというなら、それもそうかあという気がする。ただ、「土地勘」と書いたときに「あー!それって本当は土地鑑って書くんだぜ!!知らなかっただろー!!!」と騒ぐ人は僕は嫌いです(高等な自己批判みたいになってしまった)。 PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword