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監督・吉田大八、主演・佐藤江梨子「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」がとっても良かったのでレビュー。

こんにちは、あとーすです!
もう観てから随分経つのですが、今回は吉田大八監督の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」のレビューをしたいと思います。
この作品はもともと本田有希子さんの戯曲であり、これを小説化したもの三島由紀夫賞の候補なっています。

僕は映像作品としてこの「腑抜けども」に触れたわけなのですが、お芝居や小説としてもこの作品を受容してみたいですねえ。
プロットとしては最高だと思います。あとは、表現媒体が変わることよってどう変わるのか、非常に楽しみです。


さて、前置きはこれくらいにして、本題に。
この作品の主軸となるのは四人の人物です。佐藤江梨子演じる主人公は、東京で女優を目指すも全く芽の出る気配はナシ。田舎に残っている妹はちょっと根暗な感じで、バイトをして暮らしています。どうやら、こちらもフリーターの模様。そして、家には二人の兄と嫂が。実はこの兄、姉妹とは血の繋がりがなく、これが物語に大きく影響したりしなかったり…?!
人間の醜さというか、汚さというか、そういうものを非常に的確に抉り出しています。キャラクターもよく作られていて、姉は完全にヒールなのですが、でも、ヒールになった背景を考えると憎めない。妹は根暗で小動物的なのでこちらとしては応援したくなるのですが、この妹もなかなか腹黒い……。ただ、両者ともにどうしようもない部分があるので、どちらにも味方できず、なんだかモヤモヤしてしまいます。

そのモヤモヤを解消してくれるのが、嫂の存在かもしれません。彼女を一言で表すならば純真無垢。生まれてこの方人を疑ったことなどないのではないかという感じすらします。ここに一種救いがあると僕は思うんですよね。みんなが腹黒い中で、一人だけ完璧な良い人がいる。まあ、もちろん彼女にも悩みはあって、それがストーリーに影響を及ぼすことは間違いないのですが。

さて、もう一人の登場人物が長兄。姉と妹がいがみ合っている(というか、姉が一方的に妹をいたぶっている)状態の中で、板挟みに逢い、どちらの味方をしたら良いのかわからない状態にあるのがこの兄。しかも、とあることから姉と嫂との板挟みにもなってしまいます。もしかして、この物語の中で最も苦しんでいるのはこの長兄かもしれません。彼に訪れる苦悩と、そこに現れるいくつかの救いに注目です。


いやあ、しかし本当によくできた作品ですよ、これは。見ている者を引き込ませる構成、というのはエンターテインメントの基本です。また、様々な伏線も用意してあり、それを綺麗に回これ収する、その手腕も見事です。これもエンタメ的要素としては非常に重要である。
かと思えば、登場人物たちの心理に思いを馳せることで、純文学を読んでいるような気持ちにもなります。僕らは、この作品を見ることで、自分の人生を見つめなおすきっかけも得ることができる。こんな作品、なかなか出会うことはできないです。

この作品については、登場人物の人物論をやってみたいですね。文学の手法で論じるに値する作品ではないかと個人的には思っています。戯曲、小説でもこの作品を楽しんだならば、その辺の考察にも手を出してみようかなと思います。
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