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小松左京『物体O』を読んだ。とりあえず日本SF御三家に触れて思う事

物体O (新潮文庫 こ 8-7)


星新一、筒井康隆、小松左京。この三人をまとめて日本SF御三家と呼ぶことを知ったのは、結構最近のことだった。それだけ、僕はSFに興味がなかったということになる。

星新一のSSは小学生の頃に大好きで読みまくった記憶がある。個々の物語を正確に思い出すことはできないけれど、いくつか印象深い話を思い出すことができる。例えば、大きな穴に次々とゴミを捨てる話とか。これは僕が使っていた英語の教科書に載っていたので、結構鮮明に話の筋を覚えている。

筒井康隆については、半年位前に何気なく手に取った『将軍が目覚めた時』が最初に読んだものだった。これが結構よくて、次も何か読みたいと思っている。『時を駆ける少女』をの原作を書いたということでそっちも読んでみたのだけれど、これは全然本気じゃないんだろうなという気がしたから、僕の中であれは筒井作品にカウントされていない。『旅のラゴス』が面白いと聞いているので、書店で見つけたら購入しておきたいと思っている。


さて、そうして僕は日本SF御三家の最後の一人、小松左京に手を伸ばしたわけである。本当は最も有名だと思われる『日本沈没』あたりから手をつけるべきだったんだろうけど、古本屋にたまたまこれがあったのだから仕方がない。積ん読本はまだたくさんあるんだけれど、気になってしょうがなかったので先に読んでみることにした。

これが予想以上の大当たり。僕は純文学的なものよりもSFの方が好きなのかもしれない。そりゃあ、娯楽性が強いから面白いのは当たり前だろうと言われるかもしれないが、小松左京作品にはそれ以上の魅力が感じられるような気がする。

SF御三家に通底しているのは、「批判の精神」だと思う。そういえば、星新一のSS集を読んだときにも少し似たようなことを書いた(→風刺という実用的かつ娯楽的なもの 星新一『午後の恐竜』を読んで


この人たちはメチャクチャ頭が良い。ここでいう頭が良いというのは、社会を俯瞰することができるということだ。また、”if”の物語にリアリティを持たせることができる。表題作「物体O」で言うならば、ある物体によって日本のある部分が分離してしまったときに起こるだろうことをちゃんと予測することができている。これは文句なしに凄い。

日本の純文学作家というのは、この辺の感覚にはあまり優れていないように思われる(というか、あまり優れている必要がないのかもしれない)。個人的な感傷を描くことは馬鹿みたいにうまいけれど、それって僕の感覚でいうと”頭の良い馬鹿”みたいなことになる。僕はこの馬鹿が好きなので、純文学のことが結構好きなんだけれど。

もちろん、純文学の中でも社会というものをちゃんと捉えているものがあるんだろうけど、それって芸術性をかなぐり捨ててない? 純文学と他の小説との境界を突破しようとしていない? という風に思ってしまうのだ。

でも、『蹴りたい背中』とか『桐島、部活やめるってよ』がスクールカーストとかを鮮やかに描き出していて、それが社会的だと言われれば確かにそうかもしれない。でも、それって結果的にそうなっちゃっただけで……ということを言い始めると、別にSF小説も社会的に書こうとしたわけではなくて、面白く書こうとしただけなのかもしれない。むむう。


話が逸れてしまった。まあ、動機がどんなものであるにせよ、SF小説の研究というのはこの先文学の領域でなされなければならないと思うのです。江戸戯作文学なら、少しくらい真面目に研究している人がいると思うんだけど、ちょっと時代が下ってしまうとまだまだ。まあ、他の領域では随分と研究されているような気もするんだけど、ここに文学の手法を持ち込んでみるともっと面白くなると思う。

この記事を書きながら、「純文学」の定義をもう一度見つめ直さなければならないなあと思った。それから、いわゆる「中間小説」がどのようにして台頭してきたのか。多分、日本SF御三家の方々は、この中間小説というものをかなり意識しててんじゃなかろうかと思う。

で、SFの流れってラノベに引き継がれていると思うんだけど、そういえば最近のラノベってかなり前衛的な流れに行っているみたいだね。Twitterでネタになっているのを見ているだけだけど……。あれってなんか純文学に近くなってきてるんじゃないかなあと思う。村上春樹の『風の歌を聴け』みたいな。まあ、これは本論から外れてしまうんで、また別の機会にでも書こうかな。


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